高校生のとき、アンディ・ウォーホルの回顧展に行った。
彼がアーティストとしてデビューする前の作品から晩年の作品までが幅広く展示されていた、なかなかに見応えのある展覧会だったのだが、中でもひときわ印象に残ったのは、一番初めのセクションで展示されていた、彼が子どもの頃に描いた絵だった。
タイトルは《ここに心がある》。
けれどその絵に「心」は描かれていなくて、代わりに、絵の描かれた画用紙の真ん中が、ハートの形にくり抜かれていた。
その後のセクションで待ち構えていた、アーティストとしての彼による作品群は、とてもポップでカラフルで、それらの残した印象だって決してささやかではなかったのだけれど、美術館を出てひとり街路を歩きながら、その日見た作品を反芻する内、僕の心は気がつけばハート形の空白の前で立ち止まる。
家に帰ってカタログを開いた。
けれどなぜか、その作品は載っていなかった。
あれからおよそ5年。
時が過ぎるにつれて記憶は薄れ、空白の周りに何が描かれていたかすら、今となっては定かじゃない。
絵の輪郭は解けて消えて、ぼやけ切った記憶の中に、真ん中の空白の形だけがやけにくっきり浮かんでいる。
手の届かないものに向かって手を伸ばす。
そんな劇です。
観に来て頂けたら嬉しいです。
作・演出
中石海
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劇団綺畸2017年度冬公演
『ダイアローグは眠れない』
作・演出 中石海
12/15(金) 19:00
16(土) 14:00/19:00
17(日) 13:00/18:00
於 駒場小空間
全席自由席
入場無料・カンパ制
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