劇団綺畸稽古場ブログ

劇団綺畸は、東京大学と東京女子大学のインカレ演劇サークルです。名前の由来は「綺麗な畸形」。

コンクリート

 高二の四月、文化祭で行った演劇部の公演は中高時代を通して最も辛い記憶かもしれない。まとまらない部員、生まれない進捗、舞台美術のために校庭から100キロを超える岩を勝手に持ち込み、それが転がって壁に穴をあけて怒られたり、そのために食堂から勝手に借りた台車を返さず怒られたり、河原から運んだ土嚢20袋分の小石を土足禁止の教室にばらまいて怒られたり、通常18時までしか残れない学校に延長申請もせず20時まで残って怒られたり、ゲネ(本番と同様に上演するリハーサルのようなもの)までに台詞を覚えられず、見ていた先生に「もういい」といわれて上演が中止されたり、あとこれはバレなかったので怒られなかったが、外から借りてきた台を壊したり、掲示許可を取り忘れて慌てて台本に「演劇部公演12時から」とマジックで殴り書きしたチラシを学校中に貼り、終演後客出しを終えてすぐに剥がしに行ったりもした。当然、公演の準備期間の部内は「やべえ」という空気一色で、忙しいなか部員がわざわざ作った衣裳や音楽も結局使わず、本当に公演を終わらせることができたのが不思議なくらいキツい公演だった。
 でも、戯曲は最高だった。図書館で昔の高校演劇の台本を漁っていたらでてきたもので、今ではプロの劇作家になった横内謙介が高校時代に書いた『山椒魚だぞ!』という戯曲で、題名のダサさに反してその内容は高校生が書いたとは思えないほどに洗練されていた。井伏鱒二の『山椒魚』をモチーフに書かれた戯曲で、抽象性が高く話の流れもあまり覚えていないのだが、その中に出てくる暴走族のリーダーの台詞を、ぼんやりとだが未だに覚えている。
「人間なんてのはなぁ、コンクリートに頭ぶち当てて中身引きずり出さなきゃ中身なんてわからねぇんだよ。ぶち当てる前からビビッて逃げてんじゃねえよ。自分から扱いやすくまとまろうとしてんじゃねえよ」
かなりあやふやだがこんなセリフだった。

昔からそうだったのは確かだが、自分は以前よりさらに扱いやすい人間になってしまった人間になってしまったように思う。扱いづらい人間がいい人間という訳では決してないだろうが、情熱を持たなければそれは死んでいるのと同然なのは、きっとそうなのだろう。

役者・映像二年 中村光

 

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劇団綺畸2018年度夏公演
『竜骨の上で児戯』
作・演出 中石海
6/14(木) 19:00
15(金) 19:00
16(土) 14:00/19:00
駒場小空間
全席自由席
入場無料・カンパ制
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