劇団綺畸稽古場ブログ

劇団綺畸は、東京大学と東京女子大学のインカレ演劇サークルです。名前の由来は「綺麗な畸形」。

走る

二〇二〇年の六月からずっと、いつかこんな作品を書こうと思っていた。待ったり、考えたりすることなく、自分が欲しいものに真っ直ぐに走っていくような話を。自分の欲しいものから目を背けないで、ちゃんと向き合って、ちゃんと求めないといけないと思った。自分がそうあろうとすることと、そうあろうとする人間の話を書くということはもちろん全く別のことだけど、なぜか自分の中でそれがほとんど一体になっていた。こんなに書きたいことが生まれたのは初めてだった。何人か、一人でも、それが伝わっていたらこれ以上ないくらい嬉しい。

爽やかな話にしようと決めていたのに、それをつくるのは、作会前から公演までずっと泥臭い苦労の連続だった。苦しかった。しんどかった。わがままばかり言って舞台や照明や音響や映像の皆に莫大な負担をかけてしまった。「好きな人に好きって言おう」という話を書いているのに、好きな人達に負担をかけたり傷つけてしまったりした。自分の力不足が悔しくてすごく辛かった。自分が出来るのは作品で応えることだけだと思うしかなかった。

だから、本番にたどり着けて本当によかった。劇団全員でやれることは全部やったと言い切れる舞台になったと思う。本当に上演できてよかった。楽ステが終わったあと、すごい疲労と達成感の中で自分もようやく次に進めると思った。

それも全て、僕のわがままに最後まで応えてくれたスタッフと役者の皆のおかげです。
本当にありがとう。

劇団綺畸2021年度冬公演『FORE』
作・演出 栫伸太郎