劇団綺畸稽古場ブログ

劇団綺畸は、東京大学と東京女子大学のインカレ演劇サークルです。名前の由来は「綺麗な畸形」。

作・演出、役者:ここにあるもの

雨のなか傘を差さずに歩いたら髪とか濡れていらいらするし、外でものすごい雨に降られたらその雨音しか聞こえないし、ていうか雫が群れになって視界全部埋めちゃうし。それなのに、あたたかい家の中から聞く台風の音は心地よいのに、庭に出たくなってしまう。

 

 演劇の機能のひとつとして、あなたの前に、ある共同体、つまり人間どうし、あるいは人間と何物かとの絡みあいをどうにかして(物理的にも)切りとったかたちで発現させる、ということがあると思っています。稽古場から舞台上まで、(直接的にも比喩的にも)ポリティカルである演劇という媒体で、自らがいかにある種純粋な小説性から脱し、いかに人間と接触するか、その問いの連続です。
 けれど作者である僕は人間が苦手だと感じることがおおい。人間が、あるいは人間の集合が構成する制度的な関係性に疲弊する。ついつい自分のお気に入りのことばたちとじゃれあってしまう。そしてついつい、傷つけてしまう。
 僕がことばを使った演劇を志向する以上、「ここにあるもの」の、その極小の細胞は破壊される、から、僕のことばに対する不信感は消えない。もう傷つけたくないから、やめてしまおうかと考える、考えた。それでもことばを使って戯曲を書くとき、稽古場で何かが現前するとき、舞台で浮遊するとき、僕の知覚すべてがおおきな作用に支配される。雨みたいなもの。
 その雨を、あなたに浴びせたい。ニヒルな言葉に逃げがちな自分なのに、演劇という媒体を通してみると、だれかにとっての「救い」が生起する場をかなり素直に希求しているのです。

 

 『雨は、やがて』で、はじめて戯曲の共作というものをしました。相方はけっこう人間くさい奴です。そしたらとても少し恥ずかしいくらいに、人間くさいものが出来上がった気がします。
 ことばを使って、「ここにあるもの」をできるだけそのままに、そしてたくさんの意味を込めてあなたに伝えること、あるいは切りとることではじめてだれも知らない「もの」を浮かびあがらせること、少なくともそれを求めつづけた作品です。その、意味のかけらみたいなものの散らばりを、掬い取らせたい。

 

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★公演詳細

劇団綺畸2024年度冬公演『雨は、やがて』
作/廣瀬一穂・佐藤佑亮
演出/廣瀬一穂

■日程

2024年12/6(金) 19:00~
2024年12/7(土) 13:00~/18:00~
2024年12/8(日) 14:00~

※受付開始は開演の45分前、開場は開演の30分前です。
※ご予約いただきましても、開演5分前を過ぎますとお席をご用意できない場合があります。お早めにご来場くださいませ。

■会場

駒場⼩空間(東京⼤学駒場キャンパス多⽬的ホール)
京王井の頭線駒場東⼤前」駅東⼝より徒歩7 分

■ご予約

下のフォームからご予約を承ります。
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