劇団綺畸稽古場ブログ

劇団綺畸は、東京大学と東京女子大学のインカレ演劇サークルです。名前の由来は「綺麗な畸形」。

中2の夏、私は魔王の城に住んでいた。

昔話をさせていただきますよ。

2ちゃんねる」は、ご存知でしょうか。そうです。あの、インターネットの。私はかつて、あれに熱中しておりました。
ええ。言わずもがな、あんなものに時間を費やすほど虚しいこともありません。けれど、世間知らずの青二才にとって、広大無辺なインターネットの世界がどれほど魅惑的に響いたことか。皆さんにとっても想像に難くないことでしょう。
私の10代のおよそ半分は、こうして浪費されました。これはその頃のお話です。

当時「コンマスレ」という遊びが流行っていました。投稿時刻のコンマ以下、即ち小数点以下の部分をサイコロの目に見立てた運試しです。
ある日、ひとつのコンマスレが目に留まりました。その名も「ここだけ魔王の城 ただしコンマ00で魔王様に怒られる」。
引き寄せられるようにURLをクリックするとそこには、古今東西の魔物達。彼らは他愛もない雑談をしたり、ゲームに興じたり。差別も孤独も僻みも無い、2ちゃんねるらしからぬ安堵感が空間を包んでいました。
ROMってる暇はありません。ハンドルネームで5分ほど悩んだ後、早速初カキコ。反応はすぐに返ってきます。2ちゃんねるで歓迎されるというのは、どうにも新鮮な気分でした。
それからは、コンマの出目に一喜一憂。後はもっぱら井戸端会議。魔物の皆さんは博識で、私は舌を巻くばかりでした。
こうして私の、人間と魔物を往来する、ひと夏の二重生活が始まったのです。

あの日々から6年。2ちゃんねるは5ちゃんねるに名を変え、私は中二病を卒業しました。
先日、当時使用されていたチャットルームを何気なく覗いてみました。私の知る魔物の名は、既にひとつとしてありません。きっとあの頃の住人達は、他に大切な居場所を見つけたのでしょう。そう思うことにします。

あの魔王城で"竜"として過ごした数ヶ月が、今の私にとってどんな意味合いを持つかは分かりませんが、6年分の地層の下に眠る、化石となった私の分身に、せめて顔向けできる今を過ごすことが、彼への供養となるのだと思います。
出来ているかは、知りませんが。

 

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劇団綺畸2018年度夏公演
『竜骨の上で児戯』
作・演出 中石海
6/14(木) 19:00
15(金) 19:00
16(土) 14:00/19:00
駒場小空間
全席自由席
入場無料・カンパ制
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