劇団綺畸稽古場ブログ

劇団綺畸は、東京大学と東京女子大学のインカレ演劇サークルです。名前の由来は「綺麗な畸形」。

変形舞台でした

はじめまして。本公演で舞台美術をつとめた者です。この終演ブログでは、今回の舞台を作っているときになんとなく考えていたことを書いていきます。

今回の舞台は、真ん中に客席があってそれを囲むように環状の舞台、さらにそれを囲む客席という変形舞台でした。サッカースタジアムの真ん中にも客席がある、みたいな感じです。
舞台に囲まれた真ん中の客席は、四方八方で繰り広げられる劇を自分で回りながら観る必要があるので大変だったと思います。ただ、自分の上空を会話が飛び交ったり、同時に進行する二つの筋書きのうち片方しか視覚に入れられず、認識の外で進んでいく物語があったり、なかなかない観劇経験になったのではないでしょうか。
通常は舞台と客席は離れていますが、今回は舞台と客席が0距離となる設計をしました。と言うのも、ぐるぐる走り回ったり、ラインダンスやスローモーションなど、役者がその身体を大きく使う演出であったので、その動きを近くで体験してほしいと思ったからです。ストップモーションなどの役者の息づかいとかも感じていただけていたらうれしいです。

お客さんから限りなく近い舞台を作ろうとしました。舞台を囲む客席からは劇と同時に真ん中の客席も見えます。視覚のなかで劇と現実が一緒に存在するということは一見虚構と現実の境目が曖昧になるようですが、真ん中の席のお客さんの動きが物語の動きとずれていることでかえって舞台と客席に強い断絶が生まれたように思います。断絶を意識しながらも演技をする役者の動きを間近で感じる、という拮抗があるようです。演劇を「観る」というよりも、「観る経験をする」という感じでしょうか。

結局のところ、私は今回の動的な演出がとても好きでした。わくわくしました。そのわくわくをお客さんにも共有したい。ただ「おもれー」と思って劇を観る以上の経験が生み出せればいいな、と思ってました。

ご来場の皆さま、誠にありがとうございました。映像配信もするようなので、そちらもぜひ。

とりとめのない文章をここまで読んでくださり、ありがとうございました。お疲れさまでした。