私の地元には有名な植物園があって、冬になると毎年イルミネーションをする。冬に植物が枯れてしまう植物園の素晴らしい経営戦略。枯れて葉っぱとか花が無くなっちゃった木はイルミネーションにぴったりだし。
このイルミネーションは地元の中高生の定番デートスポットで、冬になるとインスタのストーリーに「イルミネーション行きたい」という文字と、イルミネーションの画像、〇と☓の投票みたいな投稿が溢れる。
本当はイルミネーションに行きたいんじゃなくて、一緒にイルミネーションに行く人がほしい私達は、〇を押したり、でもちょっとわがままに☓を押したりする。
イルミネーションをやってるとき、植物園の中の開けた広場ではライブイベントがあったり出店が出ていたりする。少し斜面になっている広場の上の方に二人で座って、しっとり雑談をしながらライブを眺める。でかいスピーカーの音で聞こえにくくなるお互いの声を笑ったり、いつもより暗くて、だけど色んな電飾に合わせて変わる相方の横顔に見惚れたりしながら、ゆっくり過ごす。
高校2年生の時一緒に行った女の子は、冬枯れの木に寄り添って写真をねだってきた。カメラの中に映る彼女は枯れた木を補うようで、電飾の一部になってしまったようだった。
「そうじゃなくて自撮りで二人で撮ろ!」
そう言ったその子に腕を引き寄せられる。制服よりもモコモコして温かい感覚は、私が木になったようだった。