僕の心臓には、虫がいました。
たまに現れては、心臓の中身を食い荒らしてまたどこかに隠れてしまう、そんなやつです。
小さい頃、僕はその虫のことを虫さんと名付けました。
親に怒られた後にはいつも虫さんが現れて僕の心臓を食い荒らし始めます。心臓の中身がどんどんえぐりとられて、痛くて、苦しくて、それでも虫さんは何も言わずに僕の心臓を食い荒らし続けます。
そんなとき、地球には僕と虫さんしかいないような気がしてきて
だから
僕と虫さんはともだちなのでした。
今日はおすすめしない人間たちを紹介します。
おすすめするものばかりじゃつまらないですからね。
紹介しましょう。
劇団綺畸同期のみなさんです。
さてこの人たち、一見真面目な人たちに見えますが、見た目に騙されてはいけません。
仮〇ライダー好きだし
酒飲んで店員ナンパするし
空手の黒帯持ってるし
常に床から5センチ浮いてるし
もこみちに似てねえし
ベアーマンだし
咀嚼がワイルドだし
綿菓子燃やして遊ぶし
木材見てニヤニヤするし
男子より釘打つの早いし
ゼラの番号めっちゃ知ってるし
突然ヘドバンしはじめるし
はち先生の中の人だし
巫女さんのコスプレが趣味だし
神木〇之介の嫁だと勘違いしてるし
うん、卵!って感じだし
アメリカ人みたいなあだ名だし
小動物だし
本当にろくな人間ではありません。困ったものです。
十七歳のある日から、虫さんが現れなくなりました。
涙がうまく出なくなったのはその頃だったと思います。
スカスカになった心臓からは、痛みも苦しみも溶け出してこなくて、ただ内側がちょっとずつ黒くなっていくだけでした。
それは、とても寂しいことでした。ともだちだったはずの虫さんはいつのまにかどこかに行ってしまいました。
僕の心臓は、空洞です。
現在、同期の劇団員は19人。この人数になるまでたくさんの別れを見てきました。
この公演まで残った人も、そうでない人も、僕のこのスカスカの心臓を埋める大切な人間です。大切で、ろくでもない人間です。
ろくでもない僕にとって、それは心臓よりも大事なものです。
僕の心臓には、もう虫はいません。
だから
僕の心臓は空洞です。
だけど
僕の心臓はしあわせでいっぱいです。
劇団綺畸2015年度夏公演
『ライクワイズ』
作・演出 木下詩織
6/11(木) 19:15
6/12(金) 19:15
6/13(土) 14:00/19:15
6/14(日) 14:00/19:15
於 駒場小空間
主宰 久保勇貴