劇団綺畸稽古場ブログ

劇団綺畸は、東京大学と東京女子大学のインカレ演劇サークルです。名前の由来は「綺麗な畸形」。

自動販売機は無垢な詐欺師

 自動販売機が好き。あんな派手かつ巨大な無機物が街の中に置いてあるのは、よく考えれば異質。それなのにおめおめと街に馴染んでやがる。客が来ないときはボタンのランプをチカチカさせて遊んでいるところが不真面目。一旦小銭を入れてみると、急に姿勢を正してボタンを一斉に光らせるところが、バックヤードでスマホをいじる若いコンビニ店員が、客が来た途端に偽りの礼儀正しさを出してくるみたいで嫌だ。接客態度は非常に良い。並んだボタンが歯のようで、ニコニコ笑顔のよう。海外のファストフード店にいそうな謎のピエロおじさんマスコット並みの底なし笑顔。「さあ良い子のみんな、好きなドリンクを選んでごらん!」的なことを言っているに違いない。では聞くが、600mlペットボトルの水が120円とは何事だ? 良い子から搾取する額として正当か? 山の頂上やアミューズメント施設になると、我々の事情を手玉にとって不当に値段を釣り上げるくせにその笑顔を絶やさないのは厚顔無恥としか言いようがない。商品を選んだ後は、飲み物が落ちてくる。ガタン。何がガタンだ! 手渡ししろよ! 百歩譲って手渡しは無理としても、なぜ飲み物を受け取るためにしゃがまなあかんのか。傲慢にも程があるぞ。

 ......まあ、たかが機械にそこまでの礼儀を求めるのも、確かに少々酷なことである。テレレレレレレレ......。おやなんだこの音は「777......」これは、スロット......?「7776」なんやねん。なんで毎回三桁揃うんだよ。実質スロット二つじゃん。なんで毎回期待させるん。これ当たったことないんだけど......というのは嘘で、遥か二年前、学校の自動販売機で当たったことがある。しかし、その時はスロットというものがよくわかっていなかった。「おや、数字が揃ったぞ......?」表示は「8888」なんと初めてのスロットで当たってしまったのである。ボタンが一斉に光る。当時の俺は「これ、もしかして、もう一本もらえるのか......?」そこで素直にボタンを押してみればいいものを!「でも、もし普通に光ってるだけだったら、飲み物もらえると思ってもらえなかった恥ずかしいやつになるな......」なーんてことをぐるぐる考えていたら、30秒が経過してしまい、ランプが全て消えた。僕は悟った。「これ、やっぱりもらえるやつだったんだ!!!!」その時の後悔の程は計り知れない。今思えば、俺は傲慢な自動販売機に一矢報いる機会を、逃してしまったのだ! 一生の不覚!!!! 

 それ以来私は自動販売機をほとんど使わない。彼らの薄汚い手口には二度と乗らぬと心に決めたのだ......。