劇団綺畸稽古場ブログ

劇団綺畸は、東京大学と東京女子大学のインカレ演劇サークルです。名前の由来は「綺麗な畸形」。

歯医者さん

生まれつき、永久歯が5本足りない。上顎、下顎の左右がそれぞれ1本ずつと、上顎の右のもう1本。だから今、わたしの口中には大人になれない4本の乳歯がある。あと1本の乳歯は抜けてしまって、「何かがあるべき」空洞が残された。

 

こんな事情で、昔から歯医者さんに行くことが多かった。歯医者さんが苦手な人は結構多いようだが、わたしは好きだ。まず、歯医者さんに行く前に歯を磨く、という行為が楽しい。そして、うっすら歯磨き粉の味が残る口で医院へ向かう。入り口を開けた瞬間の匂い(消毒の匂い?)。治療台に座り、その背が倒されていくときの感覚。歯医者さんがわたしの口を弄る、そのゴム手袋の感触。治療のためにずっと開けている口が渇いていく感覚。

 

歯医者さんでは、普段よりも感覚が「生きている」気がする。世界とわたしを媒介する五感というものがなくなり、世界とわたしが直に接続され、感覚が直接流れ込んでくる。この体験がとても好きで、今でも、歯医者さんに行く時はちょっと嬉しい気持ちになる。