劇団綺畸稽古場ブログ

劇団綺畸は、東京大学と東京女子大学のインカレ演劇サークルです。名前の由来は「綺麗な畸形」。

焚き火

ごはんの写真とかきれいな景色とかは気まぐれで撮ったりするが、それでもあんまり写真を撮らない。そのせいで懐かしさに浸ろうとしても思い出で補完するしかなくなる。被写体にもあまりなることはない、勿論探せばどこかしらには写り込んでいるし、僕を撮った写真もいくつかはある、けれど進んで撮影されたいという欲は、いやないわけではないけどいつも一瞬湧き上がるくらい、寂しいときくらいしかない。

    素敵な女の子は、写真ではいつも同じ顔をしている。特段素敵な子は、コンプレックスを抑圧しているのか、顔のとある一部分をひたすら、異様なほどに強調している。僕はそんな子を好きになってしまったことがあり、当然そのときも写真を撮らなかったので思い出で補完するしかなくなり、そうすれば「好き」と「健気だな」と「可哀想」と「戻りたい」が悪い方向に共鳴しあう僕の頭のなか、健気すぎた彼女はいつも同じ場所で佇んでいる。

    現像した写真には形があるため破けちゃうし時間を置けば色褪せるし、なにしろ沢山集めれば焚き火ができちゃう。当然燃える。あの握った手も、小ぶりな唇も、あのムードも、そして終わりを悟ったムードも、現像さえできれば記憶から忘れられるはずなんだ、僕は君と食べた味がしなかったごはんの写真と君と行った包み込まれる景色の写真を何度も見てはもう変容しきった思い出をまた生み出して、何度も反芻しながら、頭のなかの、古い微かな懐かしさに火をつける。