劇団綺畸稽古場ブログ

劇団綺畸は、東京大学と東京女子大学のインカレ演劇サークルです。名前の由来は「綺麗な畸形」。

夢と現実

そこそこ長い間大事にしていた夢として、建築士になる、というのがあったんですけど、あるとき心がぽっきり折れて諦めてしまいました。

 

まあ向いてないのはわかってたんですよね。模試の成績を見れば私が圧倒的文系人間なのは誰にでもわかることだったし。もともと文学部に行って演劇をやるか工学部に行って建築をやるかで悩んでたんです。でもこの二択だったら後者が食いっぱぐれない無難な選択肢だと思って、私はふわふわしないでちゃんと現実を見て堅実な選択ができる人間になったんだって思い込んでました。学生時代に演劇なんかやったって多分思い出にしかならなくて卒業後は全然関係ないことやってる会社で営業とか事務とかやることになるんだし、それだったら興味のある建築に関わって一生生きていけた方がいいなって。だって社会人になったら起きてる時間の大半は仕事に使うことになるんだから。

 

でも私ある瞬間に気づいてしまったんですけど、本当は別に建築になんか興味なかったんです。私は絵が好きでした。でも絵を描いて食べていけるようにはなれないだろうから、ある一定の手順を踏めばなれそうだと考えた職業の中で絵の要素がありそうなものを選んだだけ。あとはまあ女子で理系、それも工学系って珍しくてちょっとかっこいいなという気持ちもあったのかもしれません。理数系が苦手だったのもかえって気持ちの上では追い風になったというか、私は苦手なことから逃げたりしないぞちゃんと向き合って克服するぞって熱くなってたんですよね。何かに夢中になってるってかっこいいから一生懸命建築に興味あるふりしてました。建築模型の展示会に行ったり、学生建築コンペの記録集を買って眺めたりして。でも今思い返せばあれは全部やってるふりに過ぎなかったんだなと思います。

 

思い返せば、学生じゃなくなったら演劇なんか続けていけるはずない、とか、文系出身だったら営業か事務くらいしかやることない、とか、いろんなことを勝手に決めつけていましたし、自分の頭の中の情報だけで考えることを現実的に考えることだと思い込んでいました。その当時の私に見えるものなんて世の中の本当に狭い一部分でしかなかったのに(まあ、今もそうなんですけど)。最近やっと現実的であるということはいろいろ勝手に想像して勝手に諦めることではなく、毎日目の前のことを丁寧にやっていくことなのかもしれないと思えるようになりました。たぶんまだ遅くはないと信じています。

 

 

そんなわけで引退公演です。よろしくお願いいたします。