劇団綺畸稽古場ブログ

劇団綺畸は、東京大学と東京女子大学のインカレ演劇サークルです。名前の由来は「綺麗な畸形」。

丸くなるな、星になれ。

今回のテーマは星と聞き、しばらく間私はブログを書きあぐねていた。私は空に輝くさまざまな星に関する素敵な知識も持っていなければ、文学的な考察もしたことがない。それでも、ある程度の字数をもった星にまつわる文章を期日までに書き上げなければない。そして、数日間悩んだのち、「丸くなるな、星になれ」というキャッチコピーを思い出した。そこで、札幌黒ラベルを飲みその感想をブログに書いてみようと思い立った。スーパーの酒販コーナーに趣き、350ml缶を購入し帰宅した。ところが、いざ開封しようとした時、重要なことを思い出した。残念なことに、劇団綺畸では公演の稽古期間中は禁酒が絶対なのだ。だから、私はソムリエと同じ方法で札幌黒ラベルテイスティングを試みようと考えた。
ソムリエはテイスティングに細心の注意を払い、集中し、研ぎ澄まされた五感でワインを評価する必要がある。そして、各種ワインをテイスティングする上で、いちいちワインを嚥下していては、たとえそれが一口ずつであっても酔いがまわり感覚が鈍る。よって、ソムリエはテイスティングの際、決してワインを嚥下せず、味わいを確認したのちバケツに吐く。
さて今回の場合、私とソムリエ達との間では、アルコールを摂取してはならない理由が違っている。しかし劇団綺畸の規定という特殊な事情がある以上、私もバケツを用意し、味わいを確認したら吐き捨てようと思う。ここで、読者諸君からは次のような批判が上がるかもしれない。すなわち、ビールの味の決め手は喉越しであるから、嚥下すること無くビールの味を評価することなどできない、と。たしかに、ビールの味の決め手は、味わい以上に喉越しが重要であると言われる。しかし、残念ながら私は今アルコールを含む液体を嚥下することができないため、喉越しを体験することはできない。古代ローマ人よろしくそこらへんを徘徊しているカラスの羽を採取し、嚥下した直後にそれを喉奥まで差し込むことによって吐き出す、という方法も考えたがあまり現実的とは言えない。やはり今回はワインのテイスティングと同じように、香りと味わい、また色などの視覚的な特徴だけを評価する。
それと同時に、酒やコーヒーなどの嗜好飲料の味の評価の際に必ず取り沙汰されるボディという概念について考察する。また、残ったビールは煮込み料理に使用することとする。これにより、食材(すなわちサッポロビール(株)が手塩にかけて麦を醸造し、ホップで香りと苦味をつけたところの液体)を無駄にしない上に、エタノールは加熱により容易に揮発するため、アルコール分を摂取する恐れもない。また、肉などはビールで煮込むと柔らかくなるなどという俗説も存在する。一石二鳥ならぬ一石三鳥である。
と、これくらい書けばブログの字数は十分だろう。サッポロ黒ラベルテイスティングの結果はまた後日機会があれば書いて差し上げよう。
さて、最後にお伝えしなければならないことがある。そもそも、私はビールを開けてしまった以上は、必ず飲んでしまうだろうということだ。すなわち、テイスティングだなんだと偉そうなことを書いたが、やはり開封すれば私はきっとグラスに注ぎ一息に呑んでしまうだろう。従って現時点で私はビールの缶を開封することができない。よってテイスティングなど原理的に不可能である。だから、先程まで書き連ねた内容は全てフィクションであったと見逃してほしい。もちろん煮込み料理だのなんだのといった戯言も全て妄想の範疇を超えない。冷やしてそのまま飲む以外にビールを無駄にしない方法など存在しない筈だ。
最後に、私は成人しているため、法律上飲酒が可能な人間であることを一応記しておく。まあ今回のブログでは私が実際に飲酒した描写など一つもないのだが。